電脳遊戯 第18話 |
入浴し、傷の手当を終えた後、ルルーシュはロイドの部屋で丸一日眠りスッキリとした顔で執務室にいた。 ジェレミアとC.C.から開放された後、「ルルーシュが見つからない!」と探しまわっていたスザクは、不愉快だという表情でルルーシュを睨みつけていた。 ピリピリとしたスザクの空気は、ルルーシュ以外全員が理由を知っているため完全スルーしているし、スザクが不機嫌なのはいつものことだとルルーシュも無視している。 今後のことも考えて、ロイドの部屋は避難場所扱いとなったため、セシルは合鍵を常時所持できて嬉しそうだった。 ルルーシュがロイドの部屋にいる可能性をスザクに悟らせないため、C.C.もロイドの部屋は出入り禁止となってしまったが、大事な魔王の貞操を守るためだとC.C.は了承していた。当然ジェレミアも出入り禁止である。 機嫌の悪いスザクと機嫌のいいC.C.、ジェレミア、ロイド、セシル。そんな彼らが執務室に集まっていているのは、ルルーシュに大事な話があるからだという。 「で、一体話しとは何なんだ?」 ルルーシュの問いかけに、全員が真剣な表情で説得を始めた。 超合集国から、アッシュフォードで行われる会議に参加するよう通達が来たのはその数日後だった。 武官の立ち入りは禁止。 その言葉に従い指定された日に皇帝専用機でアッシュフォード学園に降り立った。 専用機から降りたルルーシュに、市民は歓声を上げ、ルルーシュはそれに答えるように笑みを浮かべながら手を振った。 皇帝を出迎えに来て居たのは黒の騎士団のカレン。 彼女は険しい表情でルルーシュを睨みつけていたのだが、次の瞬間驚きの表情を載せた。 「な!なんでアンタがそこにいるのよC.C.!!」 そう、ルルーシュの後からC.C.が専用機からひょっこりと姿を現したのだ。 その姿は知らずとも、C.C.と言う名の新緑の髪の美少女が黒の騎士団結成前からゼロと共にいるゼロの愛人だという噂は有名だった。 なぜブリタニアの皇帝が黒の騎士団CEOであったゼロの愛人と!? ブリタニアとゼロは敵のはず。 有り得ない情況に、辺りはざわめき出した。 「なぜ?おかしな事を言うなカレン。ルルーシュはゼロの同志。そのルルーシュのもとに私がいて何がおかしい?ゼロの同志ならば私にとっても同志。それと、私がこの場にいる理由は簡単だ。お前たちが仮にも皇帝であるルルーシュ相手に武官は連れてくるなと上から目線で命令したおかげで、私以外来れる者がいなかったんだ」 その言葉に、辺りのざわめきはいっそう大きくなった。 「な、何言ってるのよ!ルルーシュがゼロの同志なんて、嘘つかないでよ!」 確かに嘘だな。 なぜならゼロはルルーシュなのだから。 C.C.はその顔に笑みを乗せた。 「嘘などついていない。それにしても、黒の騎士団の人間は随分と失礼なんだな。私は同志だから、皇帝であるルルーシュにも敬称などつけないが、お前はあくまでも黒の騎士団の団員の一人であり、ルルーシュ皇帝を出迎える立場だろう!一国の皇帝をあのような文章一つで無礼にも呼び出しておいてその態度、何様のつもりだ!!」 感情など殆ど見せることのなかったC.C.が突然激高したことに、カレンは驚き、警戒するように身構えた。まるで皇帝に対して攻撃を仕掛けるようなその態度に、辺りのざわめきが大きくなった。 それを見たC.Cは、自らの身体を盾とするようにルルーシュの前に立った。 「私はゼロの同志であり、ゼロの盾。今はゼロの頼みでルルーシュの盾としてここにいる。ルルーシュに害をなすなら、まず私を倒してからにしてもらおうか?」 「ぜ、ゼロは死んだのよ!あんたは黒の騎士団を裏切ってブリタニアに着いたんじゃない!」 「嘘をつくなカレン!ゼロが死んだ!?私とルルーシュの目を見てもう一度言ってみろ!!ゼロを死んだことにし、黒の騎士団の乗っ取りを画策したのは誰だ!ゼロの弟を殺し!ゼロと私の命を狙ったのは誰だ!!さあ!答えろカレン!お前はその現場を目撃していたはずだ!!」 C.C.の怒声に、まさかその話を公にすると思っていなかったカレンは驚き体を強張らせた。辺りのざわめきはますます大きくなり、どういうことだ、ゼロを黒の騎士団の人間が!?彼女はゼロの親衛隊の隊長だぞ!?という声が聞こえ始めた。 そんな中、聞き覚えのある声が上がった。 「ルルーシュ!どういうことなんだ!説明しろ!・・・っ!離せよっ!アイツは、ルルーシュは俺の友達なんだよ!なあルルーシュ!カレン!どういうことなんだ!」 それはリヴァルだった。 ルルーシュはゆっくりとした歩みでリヴァルがよじ登ろうとした門へと近づいた。 C.C.はカレンを牽制しながらルルーシュの後を追う。 警備のものがリヴァルを抑えようとした時、一人の女性がリヴァルと助けようと頭を下げていた。その女性も見知った相手だった。 「リヴァル、ニーナ。久しぶりだな」 ニッコリと、親しい物に向ける自然な笑みを浮かべたルルーシュが声を掛けると、警備の者は慌てて二人を離した。 「ルルーシュ!やっぱルルーシュなんだな!」 「ああ、俺だよ。すまなかったな、何も話せなくて」 「ほんとだよ!説明しろ!」 「そうだな、でもそれは後でな?ニーナ、君も来てくれないか。君に頼みがある」 「いやよ!私はもうあれは!」 ニーナは顔を青ざめ、首を振った。 みんなが自分を欲するのは、あの兵器を作らせるため。 それは嫌だと首を振った。 あんなもの、もう二度と作らない、作りたくない。 「あれは作らなくていい。俺の頼みは別のものだ。頼む、ニーナ」 「別・・・?」 「おい女、お前にしか出来ない贖罪だ。そのために手を貸せ」 C.C.はカレンを警戒しながら、ニーナに話しかけた。 「贖罪・・・」 「お前はあの娘を殺された怒りであれを作ったのだろう?お前はあの娘があれを見て喜ぶと思うのか?私のために有り難うとでも言うと思うか?」 その言葉に、ニーナは顔をこわばらせた。 喜ぶはずがない。あんなに多くの命を奪う兵器を、あの方が喜ぶはずなど無い。 悲しむだけだ、あんな殺戮兵器など。 青ざめた顔でニーナはフルフルと首を振った。 「このままではあれが生まれた原因があの娘だということになるぞ?私達もそれは望んでいない。その罪の遺産はお前自身で消し去れ」 |